沖縄県の小離島・久高島を対象に、高度経済成長にともなう就労構造の変化や、漁撈技術の近代化、漁業の商業化といった、漁業をとりまく社会経済的な変化が、漁民と自然との関係にあたえる影響に関する調査・研究をおこなってきました。漁民を取り巻く社会経済的な変化にともない、伝統的な漁撈活動は『産業としての漁業』へとシフトしつつあります。『産業としての漁業』は1)機械化、2)設備投資額の増大、3)商品経済化などの特徴を備えた漁撈活動です。
漁撈民を対象にしたこれまでの人類学的研究においては、『産業としての漁業』は人-自然関係の『希薄化』をもたらすと理解されてきました。そこで本研究は沖縄県久高島においてUターンした若者たちによって実践される新たな漁撈活動の記述・分析を通じて『産業としての漁業』における人-自然関係を再検討しました。
沖縄県久高島では1980年代以降、伝統的な漁撈活動にかわり『産業としての漁業』が活発化し、それにともない多くの若者たちがUターンしていました。久高島における多くの地元の若者のUターンは『産業としての漁業』の導入によって可能となりました。Uターンした若者は、当初は自然環境についての知識や経験は浅かったものの、漁撈活動を継続するなかでそれらを獲得していました。また若者たちは利潤は少ないもののコストも少なく比較的安定した利益を得ることができる在来の漁撈活動に支えられつつ、経済的リスクをともなう試行錯誤を繰りかえすなかで、創意にみちた新たな漁法を構築していました。
すなわち、濃密な人-自然関係とは、目の前に広がる自然環境と、もてる技術、周囲の社会環境を統合して『いまここにいる自分』に最も適するような新たな自然との関係を探ろうとする人びとの姿勢のなかに立ち現れると考えています。